四、指スヤ都 見シヤ此処ヲ

指すは目指す意で、都を求めて遠い旅へ出ることである。昔であったら、長安に通じる大道に出たいとか、ローマは何処かと尋ねる心である。

考えると、人間の一生は『神の都』を尋ねるその旅だともいえる。だがこんな心に彷徨う間は、自分と都とは、いつも千万里の距りがあろう。だから、『浄土は千万億土の彼方』とも形容された。だが、都は遠い彼岸ではなかったのだ。声があって、『此処を見たか』というのである。はたと気づけば、即今の此処をおいて、何所に都があろう。心の旅とは、『此処から此処へ』であって、『此処から彼処へ』ではないのだ。妄想がそんな距りを、いつも作為しているに過ぎまい。だから、経にも『此処を去る遠からず』と記してある。
柳 宗悦『南無阿弥陀仏』より抜粋

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