教え示していわれた、
ある人が、「私は病身である。力量もない。仏道（悟りの道）を学び修行するに、耐え得ない者である。そこで仏法の教えの最も大切なところだけを聞いて、家族から離れて独り住い隠居して、心身を大切にし病気を養生して一生を終えようと思います。」といったの対し、
道元禅師は教えて言われた。
昔のすぐれた祖師たちも、必ずしも、筋金入りの体の強い人たちばかりではなかった。仏道を学んだ昔の人たちも、みな、すぐれた素質の人たちばかりではなかった。（釈尊がなくならてのち、すぐれた素質の人が少なくなって、仏法は次第に衰える、ということがいわれているが）釈尊が無くなられてから、まだそれほど経っているわけでもないし、釈尊が在世の当時でも、人がみなすぐれていたわけでもない。善人がいるかと思えば、悪人もいたのである。修行者の中にも、思いもよらぬ悪い行いの者もあり、最も劣った素質の者もあったのである。それでも、みずから卑下して道を求める心を起こさないような者はいなかったし、みずから素質が劣っているといって、道を学ばないような者もなかった。
いま、この一生において、道を学び修行することをしなかったら、どのように生まれかわっても、素質すぐれた人となり、病なき人となることがあろうか。ひたすら、からだのことも、いのちのことも、かえりみず、悟りの道を学ぼうとの心を起し、ひたすら修行することこそ、最も肝要である。
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