2010年4月アーカイブ

マーケターは、ターゲット市場から期待する反応を引き出すために、様々なツールを使います。こうしたツールによって構成されたものをマーケティング・ミックスと呼びます。マーケティング・ミックスの分類はこれまで様々なものが提唱されましたが、最も代表的なものは、1961年にアメリカのマーケティング学者、ジェローム・マッカーシーが提唱した、製品(Product)、価格(Price)、プロモーション(Promotion)、流通(Place)からなる4Pという分類です。

マーケティング・ミックスの4P図

はじめに書いたとおり、マーケティング・ミックスはマーケターがターゲット市場から期待する反応を引き出すために用いるマーケティング・ツールの組合せです。当然、企業は事業内容や戦略の相違によって、異なるマーケティング・ツールの組合せを行ないます。そのため、4Pという整理の仕方にも、これまで以下のような様々な疑問が投げかけられてきました。

  • フィリップ・コトラーは『コトラーのプロフェッショナル・サービス・マーケティング』(ピアソン・エデュケーション刊)の中で、プロフェッショナル・サービスのマーケティング・ミックスとして、物的証拠(Physical evidence)、プロセス(Process)、人(People)を加えた7Pを提唱しています。
  • 個別化(Personalization)をマーケティング・ミックスに加えようという意見も出されました。
  • Pという頭文字に固執するのをやめ、各Pの本質的機能によって次のような再定義が提唱された時期もありました。
    製品 = 構成(Configuration)
    価格 = 評価(Valuation)
    流通 = 円滑化(Facilitation)
    プロモーション = 象徴化(Symbolization)

これに対して、4Pというマーケティング・ミックスの視点はいずれも売り手の側の見方であり、買い手側の視点での4Cという根本的な批判を行なったのが、ロバート・ラウターボーンです。

買い手の視点から見た4C

ラウターボーンは、売り手は4Pを設定する前に、まず買い手の視点での4Cの検討から入るべきだと主張しています。4Cとは、顧客価値(Customer value)、顧客コスト(Customer cost)、利便性(Convenience)、コミュニケーション(Communication)からなり、それぞれ4Pに対して以下のような形で対応しています。

買い手の視点から見た4C図

ラウターボーンが主張しているのは、マーケターはターゲット市場の顧客を4Cの視点で理解すれば4Pの設定もはるかに容易になるということです。そもそもマーケティングがターゲット市場を決め顧客を理解することからはじめる活動だということを考慮すれば、ラウターボーンの主張はきわめて正当性があります。どんなベネフィットをもたらす製品を開発するのか、どんな価格で売るか、どんな販売チャネルを使うか、どんなプロモーションを行なうのかといった判断も、対象となる顧客や市場が決まっていてはじめて下すことができます。適切なマーケティング・ミックスを行なうためにはまず顧客ありきの視点が必要なのです。しかし、逆に言えば、4Pがマーケティング・コンセプトに基づくものであることを考えれば、4Cの視点はあらかじめ4Pの中に埋め込まれているということもできます。顧客志向でないマーケティングなどありえないのですから。

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